退職金のトラブルは、昔から多いものの一つです。トラブルが多いのは、退職金の正確があいまいなため労使双方で誤解があるためです。また、単純に労働基準法の問題ではなく民法の問題でもあるからです。
■退職金の性格
退職金とは「定年、自己都合、結婚、出産など様々な事由で企業を辞める場合、労働者に対して支給される手当ての総称。支給額などは、労働協約、就業規則、退職規程などで定められるのが普通。退職一時金と退職年金に分けられ、わが国では退職一時金が多いが、最近では退職金の割合が増加する傾向にある。退職金の性格としては、1、在職中の企業への貢献に対するためとする功労・勤続報償説、2、在職中の賃金を後で補填するためとする賃金後払い説、3、老後の生活を助けるためとする老後生活補助ないし保障説が代表的である。」(出典:改訂新版 人事・労務用語辞典 日経連政策調査局編)
退職金の性格でもわかるように学説が分かれていますが、賃金と異なり支払い義務はありません。そのため、退職金制度を設けるのであれば、「1、適用される労働者の範囲、2、退職手当の決定、計算及び支払いの方法、3、退職手当の支払いの時期について定めなければならない。」(労働基準法第89条第3号の2としています。退職金規定に基づき退職金の受給権(退職金をもらう権利)があれば退職金は賃金として扱われます。
1のケースでは、退職金規定があり受給権があれば労働基準法違反ということはできます。退職金規定がないのであれば労働基準法違反ということはできません。
しかし、労働者が10人未満の会社には就業規則の作成義務がないため退職金規定がないが支払っているケースもあります。2のケースでは、規定がないため就業規則に基づく請求はできません。ただし、過去に退職金を支払っているのであれば、「会社には退職金を支払う慣習がある」という事実を基に、個別労働紛争解決法に紛争調整委員会のあっせんか裁判で権利を争うことになります。
3の退職金規定で請求権があるが懲戒事項に当てはまるため支払わないケースですが、たとえ自己都合退職でも勤務中に不正行為などがあり懲戒に該当するのが事実であれば、会社の取り扱いは正当なものになります。しかし、懲戒事項が事実に反しているのであれば、2のケースと同様に裁判等で争うことになります。
■退職金のトラブルを回避するには
会社側は
1、退職金規定を定め権利関係を明確にし、従業員に周知すること(少なくとも権利があるかないかが従業員自身で確認できる)
2、退職金の保全を社外にしておくこと(中退共など社外の退職金制度を利用しておけば、退職者が一度に集中しても退職金不払いによる法令違反は避けられる)
3、退職金を支払わないケースを明文化しておくこと(重大な服務規程違反程度しか定めていない場合、会社に不利な判決が出ないとは限らない)
4、退職金規定に無理がないかもう一度見直す(バブルの頃に作った退職金規定で本当に大丈夫か?)
従業員側は
1、退職金規定があるのかを確認すること
2、規定が存在するのであれば、写しを取っておくこと |